圧力計/圧力センサの基礎知識:「差圧」「ゲージ圧」「絶対圧」の違いを解説!

1 絶対圧とは
絶対圧とは、絶対真空を基準(ゼロ)として測定した圧力を指します。
絶対真空は、物質が何も存在していない状態、言い換えれば「押す力が存在しない状態」ですので、本当の意味でゼロを基準とした圧力と言えます。
身近な絶対圧の例だと、大気圧があります。例えば、天気予報士が台風発生時に「中心気圧950ヘクトパスカル(hPa)の強い台風です!」なんて言っている場面を見たことがあると思います。
この時の気圧とは、絶対真空を基準とした圧力なので、絶対圧に分類されます。
ちなみに、絶対圧の場合、ゲージ圧と混同を避けるために、「○○hPa abs」や「○○hPaA」と表記する場合があります。
絶対圧は、後ほど紹介するゲージ圧と違って基準点が不変の為、異なる条件/環境でも一貫した基準で計測することが可能です。
その為、研究や実験では絶対圧を基準に計測することがよくあります。
絶対圧の主な用途とオススメの圧力計/圧力センサ
【主な用途:気圧の計測】
気象関連のモニタリングだけでなく、様々な場面で気圧の精確な計測が必要になります。
例えば、半導体製造プロセスの1つである露光工程では、気圧の僅かな変化が露光精度に影響を与えますので、高精度な圧力計が必要となります。
◆気圧計測にお勧めの圧力計:セトラ社 モデル270◆
モデル270は、高精度(±0.03hPa abs)な気圧測定が可能な圧力センサです。
先端研究における気象計測や、半導体製造工程で重要なプロセスである露光工程における気圧計測に用いられています。
【主な用途:研究開発、R&D】
研究開発では、実験条件の統一やより精確な計測を行う為に、基準点が不変である絶対圧で計測するケースが多いです。
例えば、最近ではCO2を分離/吸収する分離膜や吸着剤(アミン溶液など)の研究が活発です。吸着した量や速度を圧力の変化から推定することがあります。
吸収量をより精確に計測する為、基準点が不変の絶対圧が用いられるケースが多いです。
◆研究開発用途でオススメ製品:BD社 モデルDMPi◆
±0.1%FSの高精度且つ、内部回路による温度補正によって温度影響による誤差が少ないのが特長です。
広い温度範囲でなるべく精確に圧力を測定したい場合に特におすすめです。
2 ゲージ圧とは
ゲージ圧とは、大気圧を基準(ゼロ)として測定した圧力を指します。
大気圧は、地上にいれば約1013hPa(絶対圧)で、普段我々が感じることはありませんが、実は常に若干変化しています。
また、高度が上に行くほど大気圧は小さくなります。
山に登った際にポテトチップスの袋が膨らみますが、高度の上昇に伴い周囲の大気圧が小さくなったことで、袋の中の圧力が相対的に大きくなったためです。
大気圧が存在する前提で圧力を計測する場合は、ゲージ圧で計測します。
但し、前述の通り基準となる大気圧は常に変化しますので、より精度の高い圧力測定を行いたい場合は、絶対圧計を用いるか気圧を計測して補正する必要があります。
ちなみに、絶対圧との混同を避ける為に「○○MPaG」と表記することがあります。
ゲージ圧の主な用途とオススメの圧力計/センサ
【主な用途:油圧の計測】
ショベルカーなどの建機は主に油圧によって動作を行います。建機は基本的に大気圧がある前提で設計されますので、油圧の計測もゲージ圧を用いることが多いです。
◆油圧の計測にお勧めの圧力計/圧力センサ:BD社 17.600G◆
17.600Gは最大圧力レンジ60MPaG、内部にOリングを使用しない溶接構造の堅牢且つ安価な圧力センサです。
【主な用途:製造業】
製造工程で使用される各種ガスや液体の圧力を安全目的に監視する場合、ゲージ圧の圧力計が多用されます。
例えばポンプを使う場合、動作状況を監視する為に吐出圧を計測します。
また、塗装工程においてはノズルの吐出圧や、塗料を押し出すために使用するエアーや窒素の圧力を計測しています。
◆製造工程でお勧めの圧力計/圧力センサ◆
① ST/SSシリーズ
各種製造ライン、冷却水の圧力監視などで多くの販売実績がある、安価で小型の圧力センサです。
② BD社 DMP336
特殊なステンレス合金を使用して水素脆化リスクを下げている為、特に水素ガスアプリケーションにお勧めの圧力センサです。
最大100MPaGの高圧レンジに対応してます。
3 差圧とは
差圧とは一般的に、絶対真空でも大気圧でもない、任意の圧力を基準とした2点の圧力差を指します。
(絶対圧は絶対真空との圧力差、ゲージ圧は大気圧との圧力差とも言えます)
差圧はさらに、プラス側(基準より高い圧力)のみを計測する「一方向差圧」と、プラス/マイナス両方の差圧を計測する「二方向差圧」に分類できます。
差圧を計測する圧力計を「差圧計」や「差圧センサ」と言います。
差圧計は、大気圧との非常に小さな差圧(=微差圧)の計測にも用いられます。
例えばクリーンルームは、外から汚染された空気が入り込まないよう、外の圧力(=大気圧)よりわずかに高い圧力で内部を維持しています。
その差は数~数十Pa程度とかなり小さい圧力の為、ほとんどのゲージ圧の圧力計ではこれほど小さい圧力差は検知できません。そこで微差圧計の出番となります。
微差圧計についてより詳しく知りたい方はこちらの特集も 微差圧計ってどんなもの?
差圧の主な用途とオススメの圧力センサ
【主な用途:HVAC関連】
空調機のフィルターの目詰まりを監視する為に、フィルター前後の圧力差を計測する目的で差圧計が使用されます。
フィルターが詰まってくると、エアーの通りが悪くなるため、フィルターでより大きな圧力が失われ、差圧が大きくなります。また、前述のクリーンルームや病院の陰圧室のような、圧力を制御した特殊な空間の監視に差圧計が使用されます。
◆HVAC関連でオススメの圧力計/圧力センサ
① セトラ社 モデル264
最小0~25Paレンジ、精度±0.4%FSの微差圧センサです。半導体製造装置といった精密機器にも採用実績が多数ございます。
CE、UL、RoHS等各種規格対応。
② 自社オリジナル製品 デジタルマノメータ マノエース10/20
表示器とアナログ出力機構が一体となったローコストなデジタル圧力計です。
差圧だけでなく、ゲージ圧や絶対圧にも対応可能です。現場で使用される圧力計を校正する際の基準器としても人気です。
ご購入頂いた後も、弊社にて定期校正を行いますので、安心してお使いいただけます。
4 【図解】絶対圧、ゲージ圧、差圧をイメージで理解!
「絶対圧」「ゲージ圧」「差圧」の違いを図で表すと以下の通りとなります。
また、圧力計の世界では、同じ基準点でも、計測範囲と方向によって呼び方が変わります。
例えば、同じゲージ圧でも、大気圧→大気圧以上の圧力なら「正圧」、大気圧→絶対真空方向なら「負圧」と区別します。
5 まとめ
今回は、圧力計を使う際に最も大切なポイントの1つである3つの基準点、「絶対圧」「ゲージ圧」「差圧」の違いを解説しました。
エア・ウォーター・メカトロニクス(株)ST事業部は、多種多様な圧力計・圧力センサをラインナップしております。
深い専門知識を持った経験豊富なスタッフが用途に合わせた選定からお手伝いします。
圧力の計測、圧力計の選定でお困りごとがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちら